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2009年5月15日 (金)

「自転車は車道を」の矛盾

自転車に関する批判が、どうも多いような気がする。

新聞などを読んでいると、投書などで

「歩道を歩いているときに、自転車にぶつかられたが、当てた本人は謝りもしないで走り去った」

「歩道を走る自転車のマナーが悪い」

的な内容をよく見かける。

実際、確かに歩道を歩いていると歩行者を省みない運転をする自転車利用者は少なくない。人がたくさん歩いている道に減速せずに近づき、ベルをならして、人を散らすということも少なくない。

こうした乗り方には、確かに問題がある。そもそも歩道は歩行者優先のものだからである。僕も、自転車がわりと好きな人間なので、歩道を暴走する自転車は、同じ自転車乗りとして恥ずかしく思う。

しかし、そのような「自転車の暴走」をどのように改善するかを考えたとき、その解決は一筋縄ではいかない。

まずそもそも自転車はどこを走るべき乗り物なのか。

日本の道路使用に関する法律(道路交通法)には自転車は「軽車両」として、車道を走ることになっている。つまり、基本的には、通常の自動車やバイクなどと同様であり、交通標識などにも従う必要がある、ということである。

なので、これを根拠に「そもそも自転車は車道を走るべきであり、歩道を走るな」といった批判があるのだが、しかし実際には車道を走らず、歩道を利用して自転車に乗っている人は少なくない(もちろん歩道でも自転車での走行可の場所もあるが、それは今回取り上げない)。

なぜ車道を走らないのか。

それは車道が歩道よりも圧倒的に危険だからである。

自転車で車道を走ったことのある人ならば分かると思うが、日本の道路というのは基本的に「車のもの」として存在している。たとえば、道路には自転車が走るスペースは用意されていない(欧米では自転車道というのが用意されているのが普通)。

よく路側帯と縁石の内側を自転車が走るスペースであると勘違いしている人がいるが、それは間違いで、正確には路側帯上か、もしくは車道の左側(つまり路側帯のちょっと右側)が自転車の走行するべき場所である。もちろん、物理的には路側帯と縁石の間を走ることはできるが、そこは割れたガラスの破片など、パンクの原因になるようなものが多く、現実的な選択肢とはいえない。

また、同時に問題なのはそうした自転車が走るスペースが確保されてないにも関わらず、「自転車は車道を走るものだ」という認識が、自動車ドライバーに欠けていることである(厳密には欠けている人が多い、ということだが)。

そのため自動車ドライバーの中には自転車が車道を走っているのを見ると、無理に追い越したり、クラクションをならしたり、最悪なドライバーだと窓から罵声(「自転車が車道を走ってるんじゃねえ!」)を浴びせるということさえあるのである。

よく「自転車の暴走」が危険視されるが、実際には車の方がよっぽど暴走していると僕は思っている。(「自転車の暴走」に関して、歩行者へのテレビインタビューなどで「歩道を歩いていて、自転車による身の危険を感じたことがあるか」と聞くことがあるが、自転車を愛好している人間からすれば、「自転車に乗って車道を走っているときに、『死ぬかも』と思わないことはない」という感じである。

日本人は、どうも「車優先」というのが体に染み付いているようで困るが、実際に歩道を歩いていて自転車によって怪我した人の数と、車道を走っていて自動車にひき殺された人の数を比較して欲しい。どっちが危険かは言うまでもない)

だから、自転車というのは基本的には日本においては冷遇されているといえるし、もっと言うと「差別されている」のである。

また、矛盾はそれだけではない。

先に述べたように、「自転車は車道走行が原則」であり、その際には自転車は道路標識などのルールに従う必要がある。しかし、自転車に乗るためには何の免許もいらないのである。

これは実は大きな問題である。

普通、原動機付き自転車でもバイクでも自動車でも、車道を走るためには免許が必要で、その免許取得のためには、道路標識などの交通ルールを理解しなくてはいけない。だから、逆に言えばそうした交通ルールを理解できないものは、道路を走ることはできないのである。

しかし、自転車はそうではない。自転車の利用は、自転車に乗ることができる全てのものに許されている。それは同時に、「交通標識が分からなくても、車道を走っていい」ということをも意味する。 これは恐ろしいことではないだろうか。

もちろん、自動車などの免許をすでに持っている人ならば、同様のルールに従えばいいだけである。しかし、自転車に乗っている人のすべてが車やバイクの免許を持っているとは限らない。小学生や、中学生など、自転車をよく利用する多くの人々はそうしたルールを知らない(もしくは十分には知らない)可能性が高い。 実際、僕も自転車に懲りだした大学2年生のころ、自転車の本に「自転車は二段階右折をする」と書いてあったが、免許を持っている友人に聞くまで、その意味するところは分からなかったし、通常の道路標識の意味などは全然分からなかった(今でも分からないことだらけである)。

僕は、これは日本の交通事情における、大きな問題だと考える。おそらく、車やバイクを運転する人々の頭の中には、「車道を走っている人は、運転の基本的なルールが分かっている」という暗黙の了解があるはずである。しかし、それがあてはまらない(かもしれない)人々が、実際に車道を走っているのである。 このように、自転車の現状に関しては、法律と現実の間に非常に大きな壁がある。

では、これをどのように改善するか。

まず、簡単なところでは、自転車の歩道走行を許可するということである。これは、現状を認めるということになるが、同時にあくまで歩道は歩行者優先であり、人が多い場所では、自転車のドライバーは降りて歩く、ということを徹底させるべきである。

もっと大きな変化を目指すのであれば、「自転車は車道を走る」という法律的な原則を徹底するということが望ましい。そして、その際は「自転車優先」ということを広めることが大切である。また、自転車自体を免許制にしてもいいかもしれない。「自転車は車道を走るものだ」という認識が、ルールとして徹底されれば、それに従わざるを得なくなる。車もそれを認めざるをえなくなるだろう。

さらに、理想としては、車道内に自転車専用のレーンを設けるか、もしくはまったく別の自転車道を積極的に整備していくということである。 エコロジーが強調される今の時代において、自転車ほど環境保護に貢献する乗り物はないはずである。「セグウェイが公道を走れるように」などという頭のおかしい議論を行う前に、自転車を普及させることを、日本人は考えるべきであろう。

参考

「軽車両と道交法」 http://www9.plala.or.jp/hiyotrio/newpage040.htm

自転車Q&A 道路交通法関連」

http://www.bicycle-file.com/jm_q&a_1.htm

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